このページでは腎移植時の「手術直後から退院まで」
の体験談と流れについて執筆しています。
腎移植(腎臓移植)の流れと体験談は全部で4つに分けて執筆しています。
これから腎移植を検討されているかた、お知り合いが腎移植を受けられる方はぜひご一読ください。
手術終了から退院まで
手術完了~ICUへ移動
手術が終わり、手術室で肩を軽くたたいて呼びかけられて目が覚めます。
目がさめると先生がたがずらり。
「うまくいきましたよ、成功です」
安心というよりは、体がつらすぎて朦朧としていました。
腕に新しい点滴用の針を刺したそうなんですが、全身がそうとうむくみ、腕に針がまったく刺さらず暴れたそうです。腕を何度も刺された痛みの記憶がなんとなくあります。
そのままICU(集中治療室)に運ばれます。
よくドラマ等で目にする重傷者用の部屋みたいな所です。
手術後、ICU1日目
とにかく喉が渇きますが、手術直後は水を飲んではいけません。
それでも口の中がカラッカラになるので、水を含ませた専用のスポンジで看護師さんが口の中をふいてくれます。
何度もお願いするのも申し訳なくて気が引けるのと、何より大きな声が出せないので看護師さんが近くに来るのを待ちます。もちろんナースコールはありますけど。
ひたすら痛みに耐えながら、身動きも取れず、ただただ時間が経過するのを待ちます。
錠剤の痛み止めがもらえます。
また、自分でボタンを押す事で点滴を通して痛み止めが注入される痛み止めをもらいます。
どちらも、利用までの時間に決められた間隔があり、常時痛み止めをしてもらう事はできません。
これがほんとに辛いです。とにかく痛くて動けないので、もはや瀕死状態です。
時間の経過は、永遠に感じるほど長くつらいです。
それでも、記録には残そうと、写真は撮ってもらいました。
むくみのせいで、ぱっちり二重のはずの目が切れ長の奥二重になって人相が悪くなってました。
全く身動きができないので、看護師さんが滑る手袋を着用し、体の下に手をいれて手を滑らせて動かしてくれます。手はパーの状態で滑らせるようにするのですが、これをしてもらえるだけで本当に体が楽になります。
30分おきにやってもらいたいくらいでした。
つらいなりにもスマホを触るのですが、Lineも打ちかけて途中でやめてしまう状態でした。
ひとまず、手術後どれくらい後か分かりませんでしたが、会社の代表や仲間に無事の連絡をしました。
手術直後から2日目くらいまでは瀕死です。
手術後、 ICU 2日目
2日目から、なんとか電動ベッドの起き上がりを利用して、ベッドの縁に座ってみようという訓練がはじまります。手術後は、意外にもなるべく動いた方が回復が早いそうです。
腹筋に力がまったく入らないのと、少しでも力が入ると激痛な、ので起き上がるのは難易度が高いです。
それでも、寝たきり状態よりは座る姿勢になる方が体が楽でした。
何時間かおきに起き上がる訓練をしながら、座るようにしました。
この日から、食事がでました!全て液体ですが。
体が食事を求めていたのか、人生の中で一番美味しく感じました。
この日も手袋をして体の下を滑らせるマッサージをしてくれました。
この日から、少しづつスマホを触るようになりました。
動画を見るような体制はつらいので、エンドレスで「人志松本のすべらない話」をきいていました。
何度も時計を見ますが、5分しか経過してない事がほとんど。
なるべく睡眠して時間を稼ぎたいところです。
手術後、 ICU 3日目
この日は移動式の点滴スタンドにつかまった状態での歩行訓練がはじまりました。
10メートル歩くのに、5分ほどかけて。ほんとに少しづつです。
それでも動ける喜びはひとしお。
自分の意思で動ける事は幸せな事なんだと実感しました。
あとは、やはり時間の経過を待つのみ。長いです。
この日も美味しい液体ごはんです。
この日、初めて全身の鏡を見ました。体には管が接続されまくっています。
首に3本、腕に3本、腹部に1本、尿道に1本。
厳密には、首には1本入り、枝分かれが3本。腕は2本で枝分かれが3本だったと思います。
3日目という事もあり、通常会話は問題なくできるようになってきますし、精神的にも元気になってきました。
自分の力で動ける事はとてもうれしいです。
管の多さに、サイボーグ感を感じ、「技術ってすげえな」と思いました。
手術後、4日目
いよいよ、自分の病室に戻れる事になりました。
痛みはまだまだありましたが、朦朧としたような感じはほぼありません。
自分の病室は、基本的に無菌である必要がったので個室を用意していただいていました。
まだ自分の力だけで体を起こすのは至難の業です。寝返りも基本的には無理です。
体もとにかく痛いので、自由に動くという所まではいきません。
しかし、念願のパソコンにようやく触れるように。
手を伸ばしてタイピングするのは痛くて大変なので、長く再生できる動画を頑張って入力して流します。
それでもICUでスマホしかない状態に比べると天国です。
自分の個室に戻ると、とても気力がわいてきました!
外界とも連絡を取り合えるので、それも元気の源。
手術後 5日目
頭はかなりすっきりしてきます。
この日くらいから、液体ではなく流動食が出たと思います。
尿道の管から、排泄用の容器に自動的に尿が溜まっていきます。
看護師さんが数時間おきに交換をしてくれます。
この尿に、血液が混じっている色を確認しながら腎臓が正常に機能しているかをチェックしてくれます。
どの看護師さんも本当によくしてくださって、既に感謝のきもちでいっぱいでした。
痛みはかなりあるものの、初めて少し横向きに寝そべる事ができるようになりました。
歩行訓練も、毎日少しづつ進めていきます。
やる気というか、モチベーションはとても高くなりました。
生きる事や仕事に対する意欲など、全方位的に。
手術後 6日目
至って良好。
この日、傷口にぶっささっていた直径1.5cmくらいの管を抜きます。
この管は、手術後に出てくる血を垂れ流さないように刺していたものです。
恐らく、差し込んでいる長さとしてはかなり短く、抜くときもほぼ痛みは感じませんでした。
その穴は縫うのかと思いきや、ガーゼをして終了です。自然に閉じるそうです。
この頃からは、明らかに透析前と頭の回転速度が変わってくるのを体感していました。
人工透析を行っていた時は、頭にもやがかかったような状態が多かったように思います。
少しハイになるくらい回転が良くなりました。
そして、尿からも鮮血がだいぶ抜けて、普通の尿の色に変わってきます。
いよいよ翌日は、尿道の管をはずすという事になりました。
手術後 7日目
尿道の管を外します。外す前に、膀胱が尿を貯められるサイズを計測します。
腎不全で尿の出る量が減る事により、膀胱が小さくなっているそうです。
水を尿道の管を通して膀胱に送り込むのですが、むちゃくちゃ気持ち悪いです。
そして、感覚的にもう入らないか聞かれた所で計測終了。
尿道の管を抜きます。痛いんですこれが。確か、ステントという器具だったかと思います。
ですので、先生は敢えて抜くタイミングを言わずに突然抜いてくれました。
痛かったけど、恐怖が無かった分助かりました。
今後は、2時間おきに尿を出して、出した量を計ります。24時間2時間おきに、有無を言わさずトイレに起こされます。
そして、毎日2Lのお茶か水を飲むタスクがあります。
腎臓にたくさん水を送り込んで働かせるためだったかと思います。
なにせモチベーションが高いので、2.5L~3Lは飲んで得意げになっていました。
恥ずかしいです。
この日、点滴以外の体の管が全て外されました。なんて快適!
病院の服から、短パンとTシャツに着替えられました。
鏡を見てニヤニヤします。しかし、げっそりしてます。
透析時のように水が体に溜まらないからですね。むくみが全くありません。
老廃物も適切に処理されるせいか、本当に気分が良いです。
あとは、24時間おしっこマラソンを2週間継続する事と、変な感染症にならないかチェック。
そして、いろいろな数値のチェック、拒絶反応が起きないか経過観察に入ります。
入院からここまでで、約2週間。看護師さんともかなり仲良しになってきます。
この日は手術後、初めての洗髪!看護師さんに美容院のような台に案内されて洗ってもらいます。
天国です。天国です。天国ぅぅ!です。
歩行訓練も、病室のフロアを暇があったらぐるぐる歩きます。
そして、この日は母親の退院日でした。
ちなみに母親は、腎臓摘出手術後から2日か3日目くらいで、近所の喫茶店にカツカレーを食べに行ったそうです。強すぎる。
手術後 8日目から退院まで
24時間の2時間おきのおしっこマラソンで眠気と戦う日々を送りながら、めきめき回復していきます。
8日目からは、会社の仲間たちと仕事の面談をしたり、取引先の方や友人がお見舞いにきてくれたりと、毎日、検査以外の時間は普通に忙しくしていました。
コロナ禍ではなくて本当に良かったと思います。人に合ったり、仕事の話ができると活力がわきます。
とはいえ、ドライウェイトで63kgあった体重が、55kgまで落ちました。
8kgも落ちるとガリガリです。
お腹に力を入れると怒られるので、なんとか背伸び運動を片足づつ行い、内緒でふくらはぎの筋肉だけでも救出する作戦を実施していました。
血管もやせ細るので、採血が大変です。
シャント(人工透析用に腕に作ってあるサイボーグ極太血管の事)は透析室の看護師か医者しか採血には使えないので、通常の血管からとるしかありません。
でも全く採れません。シャントと逆の腕のあらゆる箇所、手の甲も試みますが、採れません。笑
足の血管から試みるも、採れません!
合計12か所くらい刺したあと、伝説の凄腕採血看護師が登場し、一撃で足首のあたりから採っていきました。お互い無言でグータッチしました。
採血は痛いですが、透析で慣れまくってるので、裁縫用のほっそい針の痛みなど大した事はありません。
伝説の看護師さんは、その後みかける事はありませんでした。
伝説すぎます。
手術後 10日目
手術後の10日目くらいからは、痛みもだいぶやわらぎ、痛み止めさえあればそこそこ普通に過ごせるようになってきます。
シャワーも自分で入れるようになります。お腹の傷口が濡れてはいけないので、撥水性のあるシートを貼ってもらいます。最初は腕を上げるのもおそるおそるでしたが、徐々になれていきます。
手術後 14日目
ようやく24時間おしっこマラソンは7日目を迎えますが、夜2時間おきに起こされるので眠いです。
あと1週間、このマラソンを耐えれば退院が見えてきます。
このあたりで、割と普通に寝返りも打てるようになり、体が自由に動くようになっていたと思います。
点滴が接続された何かの計測器も、確かこのあたりで外されたように思います。
これは電源を抜いたら5分ほどでものすごい音でアラートが鳴り響くのでやっかいでした。
ここまで仲良くいつも一緒にいた点滴をつるす移動式のポールとも、お別れです。
看護師さんとは、恋ばなをする仲になってきます。
入院生活にも慣れて、回復速度も速くなるのでむしろ楽しくなってきます。
手術後15日から21日め、退院まで
正直言って健常者が24時間おしっこマラソンをしているだけのレベルになってきます。
ごく普通の生活です。朝起きて食事をとり、看護師さんと談笑して仕事。
面会や検査を行い、2Lの水を飲み、シャワーに一人で入って夕飯を取る。
面会時間が終わったら消灯時間まで用事を片付けて、22時から友達とゲーム。
実は、長丁場になると思いPCモニターとノートPCとps4、自前のWi-Fiを持ち込んでいました。
部屋にトイレとシャワー、冷蔵庫とテレビもあり、食事も運ばれてきます。
看護師さんも常に気を配ってくれるので普通のホテル以上の生活です。
退院直前は腹圧をかけないようにスクワットもしていましたし、仕事の面会もできるのでむしろ豪勢です。
特に問題も起きる事もなく、退院日を迎えました。
不謹慎ですが、医療介護つきホテルです。
退院の日
いよいよ退院。仲良くなった看護師さんや先生がたと毎日会えなくなるのはとても寂しく思いました。
退院の全日に、お世話になったICUと、透析室、入院病棟それぞれにお手紙をしたためました。
そして、お菓子の詰め合わせと、お手紙を各フロアごとに分けて、病室のチェック後に「忘れ物」として病室に戻し置いて、各フロア挨拶に回って退院!
看護師さんがたとは、「絶対ごはんいきましょうね」と約束して盛大にお見送りしていただきました。
コロナ禍で、お食事会は実現はしていませんが、どんな形であってもいずれお礼をしたいと思っています。
しかしお食事会が実現する前に、退院から約9か月後。
胆のう摘出手術になったため「ただいま戻りました」と言って苦笑いをとってやりました。
退院直前は家族のような雰囲気でした。
感謝してます。
以上が、手術から退院までの流れでした。
次は、腎移植の感想や、出来事について執筆していきます。
まとめ
手術から退院の流れは以上です。
この記事は、以下のシリーズで執筆いたしました。
長くなりますが、腎移植を控えているかたや、ご検討されている方、ご関係者の方に知っていただけると嬉しく思います。