人工透析患者と、腎移植後の食事制限を比較
透析していたころと、移植をした後だと食事制限ってどう変わるの?
制限が変わるというより、ほぼ食事制限がなくなる、という感じだね。
凄いね腎移植。
ほんと、医学ってすごいよね。透析にしても。
実際どう変わったかを見ていこう。
人工透析患者と腎移植後の食事制限を比較してみました。
このページは、人工透析と腎移植を行った後で食事制限がどう変わるか知りたい人に向けて執筆しています。
人工透析患者の食事
血液透析をしている場合の食事
透析の食事制限は、食べてはいけないものはありませんが食べる栄養素の量に制限がかかります。
栄養素の摂取量それぞれに一定の制限があるか、制限量を算出する式があります。
血液透析の栄養摂取量(1日あたり)
タンパク質 | リン | 食塩 | エネルギー | カリウム |
---|---|---|---|---|
※1標準体重 × 0.9~1.2g | タンパク質 × 15mg 以下 | 6g 未満 | 30~35kcal | 2g 以下 |
※1標準体重=身長(m)×身長(m)×22
例)身長160cmの場合の標準体重
1.6(m)×1.6(m)×22=56.3(kg)
この例を表に当てはめてみると以下のようになります。
身長160㎝の人の栄養摂取量の例(1日あたり)
タンパク質 | リン | 食塩 | エネルギー | カリウム |
---|---|---|---|---|
56.3kg × 0.9~1.2g | タンパク質 × 15mg 以下 | 6g 未満 | 30~35kcal | 2g 以下 |
= 51~68g | = 760~1013mg | = 6g未満 | 30~35kcal | 2g以下 |
各数値は、年齢や性別、体重、透析の状態などによって異なります。
目安として考えて下さいね。
また、長時間透析や頻回透析を行う事で、食事の制限は緩和される事があります。
私は最終的にオーバーナイト透析(長時間透析)を受けていたので、
厳密に摂取量の計算はしていませんでした。
採りすぎや不足に注意をはらう程度で制限をしていました。
ちなみに、血液透析の場合、水分摂取量は「できるだけ少なく」が基本です。
腹膜透析をしている場合の食事
腹膜透析では、血液透析に比べてカリウムの制限がなくなります。
腹膜透析は尿量があるていどあるうちは、塩分の水分の制限は血液透析よりも少なくなります。
タンパク質 | リン | 食塩 | エネルギー | カリウム |
---|---|---|---|---|
※1標準体重 × 0.9~1.2g | タンパク質 × 15mg 以下 | PD除水量ℓ ×7.5 +尿量ℓ ×5 | 30~35kcal | 制限なし |
腹膜透析の場合も、 各数値は、年齢や性別、体重、透析の状態などによって異なります。
あくまでも目安として利用し、主治医と相談しながら決めるようにしましょう。
透析をしている場合の食事まとめ
塩分とリンは、どちらの透析方法でも特に注意したい項目です。
血液透析の場合は、カリウムを取りすぎにも注意。
バナナが多いのは有名ですが、じゃがいも等のいも類や野菜にも多く含まれます。
健康に良いと思ってサラダを食べすぎた、という事の無いように気を付けましょう。
タンパク質は、目安量以下や未満ではなく、最低摂取したい量という意味でもあります。
健常者であっても、タンパク質を適切な量を接種できている人は少ないかもしれません。
食品のタンパク質量の例
- 卵1個 約8g
- 納豆1パック 約12g
- 牛肉(もも)100g 約20g(脂身なし)
- 鶏もも 100g 約17g(脂身あり)
1日にこれらを全て食べて、約57gです。
先ほどの表では、身長160㎝の人で、必要な量が51g~68gでした。あと牛肉を100g食べて上限になるくらいです。
どうでしょう?健常者の方でも、意外と接種できていないかもしれません。
タンパク質はある程度感覚をつかむまで、毎日計算する事をおススメします。
- 制限量の感覚をつかむまで、なるべく計算する
- 食塩は、汁物などに多く含まれるので汁は残すようにする
- 摂取量が不足しがちなたんぱく質は、目安が感覚で分かるまで計算する
腎移植を行った後の食事
制限らしい制限は、なんと「グレープフルーツ」類と「セイヨウオトギリソウ 」です。
グレープフルーツやグレープフルーツのジュース、ゼリー等は食べないようにと念を押されています。
なんだか、絶妙に微妙な制限ですが、グレープフルーツに類するものは「免疫抑制剤」などに影響が出る可能性があります。
セイヨウオトギリソウ も、免疫抑制剤に影響が出る事があります。
※セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)は、お茶・サプリメントに入っている事があります。
それ以外は、透析を受けていたころと比べると全く食事制限が無いのと変わりません。
移植後ただちに、という訳ではありませんが、退院する頃には食事制限はほぼ無くなります。
そして、手術後の液体の食事ですら、驚くほど美味しく感じるくらい味覚も良くなります。
腎移植後の食事
腎臓にだけではなく、体を気遣った食生活がとても重要です。
聞き飽きるくらい、どこでも言われている事ですが。
バランスの良い食事をとる。
これが最も重要です。
もちろん、塩分の取りすぎも要注意。
そして、たくさん水を飲むのがノルマです。
移植のあとも数日後から水をたくさん飲んだと思いますが、退院後もたくさん水を飲みましょう。
1日、2リットル以上が目標です。
尿量をなんと1.5~2リットル出すのが良いとされているためです。
人工透析の原疾患にもある通り、糖尿や動脈硬化になるような生活習慣は絶対にやめましょう。
腎移植後に食べて良い物と食べてはいけない物
食べても良い物
食べてはいけない物
腎移植後の食事まとめ
基本的には食事制限から解放されて、食事が楽しめるようになります。
しかし、美味しい物はだいたい塩分や脂質、糖質が多いので、気を付けましょう。
- グレープフルーツに類するもの以外は食べてOK
- セイヨウオトギリソウは食べるのNG
- バランスの良い食事をとる
- 1日2リットル水を飲む(尿量1.5リットル以上)
- 生ものは新鮮なものに限定する(感染症予防)
まとめ
腎移植ができると、健常者並みの食生活になります。
しかし、やはり健常者とは違い、腎臓が弱い事に変わりはありません。
「移植でなんでも食べれるようになった!やったー、好きな物だけ食べよう~」
じゃダメです。
ドナーの方は、願いを込めて腎臓を提供してくださったはずですし、献腎移植の場合は長年順番を待ってようやく移植に至ったはずです。
少しでも腎臓の寿命を長くするためにも、バランスの取れた食事が何より大切です。
他にも、睡眠、運動、アルコール量などに注意して、いただいた腎臓をいたわっていきたいですね。