この記事では、人工透析を受けている透析患者が、どのように死んでいくのかを調査しまとめました。
私は腎移植して今は透析患者ではありませんが、腎臓がダメになると透析生活が再開します。
透析をしている場合、人生の最後がどうなるのか気になり、執筆に至りました。
そして、死因が判明している事は多々ありますが、実際どのように死を迎えるのかが一番気になります。
透析患者はどのように死を迎えるのか
透析患者の死因
まず、透析患者の死因についてです。
※日本透析医学会 統計調査委員会 わが国の慢性透析療法
2015年末の慢性透析患者に関する基礎集計より引用し、データを加工しています。
心不全のイメージはもともとありあましたが、感染症は意外でした。
- 約25% 心不全 、感染症
- 約20% 不明・その他
- 約10% 悪性腫瘍
- 約5% 脳血管障害 、悪液質/尿毒症 、心筋梗塞
- 約3% カリウム中毒/頓死
- 約1% 消化管出血 、腸閉塞 、肝硬変症、自殺/透析拒否
- 約0.5% 災害・事故死 、肺血栓/肺塞栓
不明とその他を除くと、透析患者の死因の約3分の2を、心不全と感染症が占める事になります。
そして、全体を見ると脳血管障害や心筋梗塞、肺血栓などの「血管が正常でない事が原因」である事が多く見受けられます。
血管が原因による死亡
血管の劣化が原因で死亡するケースは、心不全だけでない事は前述の通りです。
透析患者さんの血管の劣化とは、いわゆる「動脈硬化」を指す事がほとんどです。
一般的な動脈硬化
血液の中のコレステロールや脂肪が血管にたまり、血管の壁が厚くなったり、弾力が落ちて硬くなる事が多い。
透析患者の動脈硬化
ミネラルの代謝バランスが崩れ、血管が石灰化。
血管が硬く、もろくなり、血管が破れてしまう事もある。
ミネラルとは、「リン・カルシウム」の事。
動脈硬化は、透析患者の死亡原因の1位でもある「心不全」を引き起こすだけでなく、「心筋梗塞」や「狭心症」といった死因にもなっています。
透析をしているだけで、動脈硬化になりやすい状態です。
一般的な動脈硬化になりやすい「メタボリックシンドローム」と診断された方などは本当に注意が必要。
脂肪やコレステロールの多い食事や喫煙は動脈硬化の大きな原因。
後述しますが、最悪の場合「足の切断」などが必要になる事もあり得ます。
どうしても、透析をしているとある程度の生活が出来てしまうため、健常者のような生活をしてしまう事もあります。
しかし、透析以外の時間も「自分は健常者ではない」という自覚をもって、最悪の事態にならないように気を引き締めて生活したいですね。
血管を長持ちさせる方法
当然ながら、健常者とおなじく「脂肪」「コレステロール」「血圧」のコントロールは必須です。
透析をしている場合は、以下の3つが重要になります。
- 十分な透析を行う
- リンを抑えた食事
- リン吸着薬を適切に利用する
十分な透析を行う
血液透析は、一時的に腎臓のかわりをするようなものなので、週3回4時間ではやはり健常者と比べて腎機能がはたらく時間としては極端に少なくなります。
最低でも週3回4時間はきっちり行う事。
可能であれば、長時間透析を導入しましょう。
リンを抑えた食事
リンは主に、タンパク質が多い食品に多く含まれています。
また、麺類、干物や練り物、ハム・ベーコン、ヨーグルト、チーズなどはタンパク質の量のわりにリンが多く含まれます。
タンパク質も必要ですから食べてはいけない、という訳ではありません。
食品添加物は、成分表示をする必要が無いのでリンの含有量が不明です。
加工食品などにリンがどれだけ含まれているか分からないので、極力加工食品や添加物の多い食品は避けるか、少量ににしましょう。
リン吸着材を適切に利用する
処方されるリン吸着薬が、リンの過剰摂取をコントロールしてくれます。
医師に処方された薬の飲み忘れに注意しましょう。
感染症が原因による死亡
感染症が原因による死亡が心不全並みに多いとは全く知りませんでした。
しかも、2007年以降のデータを見ると、心筋梗塞よりも若干数値を上回っていました。
透析患者が感染症になりやすい理由は「免疫力の低下」が主な原因
透析患者の免疫力が低下しやすい理由は、「栄養の不足」、「尿毒素」、「貧血」などさまざまな理由があります。
感染しやすいうえに、治りづらいという特徴があります。
感染症とは
細菌やウィルス、真菌、寄生虫などの病原体が体に侵入して症状が出る病気。
コロナウィルスやインフルエンザも当然、感染症に含まれます。
特に注意したい感染症
透析患者さんの中でも、重症化しやすく特に気を付けたい感染症は以下の3つ。
- 肺炎
- インフルエンザ
- ウィルス性肝炎
肺炎
肺にウィルスや細菌が入って感染し、肺が炎症する事で起こる病気です。
健常者であっても、免疫力低下や、体力が低下している時などに肺炎にかかりやすいと言われています。
インフルエンザ
毎年、冬になると流行する馴染みの深い風邪。
通常の風邪に比べると症状がとてもつらい事でも有名ですね。
高齢の方は重症化する事もある、危険なウィルスです。
ウイルス性肝炎
肝臓がウィルスに感染して起きる病気。
肝炎ウイルスには、A型、B型、C型、D型、E型があります。
血液・体液から感染する病気ですが、透析患者さんの場合、特にC型肝炎に気を付ける必要があります。
感染症を予防するには
- 手洗い、うがい
- 免疫の確保
- シャントの傷口の消毒
- カテーテルの出口のケア
- ワクチンの接種
- マスクの着用
感染症予防には、上記の内容が効果的です。
特別な対策という事ではなく、日ごろから注意しておく事が一番の予防です。
不幸中の幸いですが、コロナウィルスの蔓延した事で、私はマスクの着用や手洗いうがいが完全に習慣化しました。
免疫の確保はには、「睡眠」「バランスの良い食事」「透析時間の確保」が重要ですね。
また、ついつい放置しがちですが、穿刺の傷口などには汚れた手で触らない事。
腹膜透析をされている方も、カテーテルの入り口を清潔にする事などに特に注意しましょう。
透析患者はどのように死ぬのか
透析患者の死因の多くは、心不全や感染症という事はお伝えした通りです。
では、心不全や感染症で死ぬとは、どういう状況なのか。
心不全で死亡する場合
心不全は、病名ではありません。
心筋梗塞などを含む心臓の病気などが原因で、心臓のポンプの役割が機能低下する状態の事。
全身に血液が循環しない事が問題で、「急性心不全」と「慢性心不全」が起こる。
急性心不全による死亡
呼吸困難や激しい胸の痛み、動悸や咳きの症状が出る。
重症だと、気を失う事もある。
心臓が機能低下した状態で気を失う事があるため、突然死となりやすい。
血液透析患者の場合、2割りの方がこの突然死との事。
さらに、この半数は死亡の発見が遅れていた。
1人の時に、突然亡くなったという事になる。
数値的な概算で言えば、透析患者の約1割以上は、1人の時に突然死ぬという事。
感染症で死亡する場合
2008年と2009年のデータによると、透析患者と一般住民の感染症死亡を比較した場合。
一般住民の感染症による死亡は、約9割が肺炎。
透析患者の場合、肺炎が約5割、敗血症がが約4割。
読み替えると、
「透析患者の約3割は感染症で死亡する。そのうち約半数はなんらかの感染症から臓器障害で死亡する」
という事になります。
まとめ
透析患者のほとんどが、心不全や感染症によって死亡します。
今回は上記の2つの死因についてクローズアップして執筆しました。
透析は、あくまでも腎臓機能の補助でしかなく、100%腎臓の機能を果たすものではありません。
長く続けていれば血管にもダメージが蓄積します。
血管のダメージは、心筋梗塞や心不全などの原因となり、そのまま死因に繋がっています。
感染症による死亡も、透析が原因で免疫が低下し、感染する事が非常に多くなります。
これらの対処は、聞き飽きたと思うくらい普通の事。
- 十分な透析を行う
- リンを抑えた食事
- リン吸着薬を適切に利用する
- 手洗い、うがい
- 免疫の確保
- シャントの傷口の消毒
- カテーテルの出口のケア
- ワクチンの接種
- マスクの着用
- たばこを吸わない
- 適度な運動
- バランスの良い食事
- 睡眠の確保
病院に行っても、どれもよく聞くものばかりで、特別な事は何もありません。
毎日これらの事を気にしながら生活を行う、という事が最適解。
心不全や心筋梗塞などは、痛みで気を失う事もあるそうですし、
肺炎についても呼吸困難や強い咳など、これも大きな苦しさがあるようです。
贅沢な願いかもしれませんが、できれば、苦しさや痛みを伴わず寿命がまっとうできるように日ごろの生活習慣をより良い物にしていきたいですね。
そして機会があれば、腎移植をする事が私としては良いかと思います。
今回紹介できなかった死因についてもまた執筆していきます。